2013_02
16
(Sat)00:47

「氷の掌 」 

「こおりのて」と読む。

友人おざわゆきさんが、お父上の過酷な実体験を基に、
3年近く掛けて描きあげたシベリア抑留記の漫画である。

いや、内容からは漫画と言っては申し訳ない。
絵もおざわさんのは優しい。
それでも作品中から吹き付けてくる、シベリアの怖ろしいほどの冷気。
抑留された兵士たちの慟哭も聴こえて、読むうちに寒気を感じてくる。


お父上はあまり語りたがらなかったという。
悲惨な経験をした人は概してあまりそれを口にしたがらない・・・

しかし、おざわさんは「今聞いて伝えなくては」との思いに押され、少しずつ少しずつ
父上から訊き出して行ったそうだ。

そして絵にする時にまた彼女は頭を抱えた。
文章ではたくさんあっても、絵に出来る資料がまったく少なかったそうだ。
彼女いわく 
「例えば、60年前のシベリアで使ってたスコップってどんなの!?とか、ひとコマごとに悩んで凹んだ。」

それは時代ものを描く(書く・ではない)時に、ほとんどの作者が呻くことだ。
自分の国、日本の昭和の初め、大正時代でももうわからないことだらけ。
ましてや他国のこと、彼女の苦労はそれは大変なものだったろう。

もうやめたいなげ出したい・と何百回も思いつつ、彼女は描きあげた。
多分彼女は、空に漂う大いなる念を捉えていたのだ.(と、これは私の妄想的考えだけど)

これは絶対何かの賞を取る!と、読んで私は思った。

最初、この作品は同人誌を売るコミケで世に出され、それが出版社の人の目に止まり
小池書院から単行本として出版された
そして文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞を受賞したのである。

今日はその受賞を祝うパーティで、出席したちばてつや氏は
「『はだしのゲン』『火垂の墓』に並ぶ名作です。」と絶賛した。
アニメーションになる話もあるという。
大勢の人に読んでもらいたい。伝えたい。戦争がもたらす悲劇を。
伝えたいという思いが表現する者の力となる。


一つの大業を成した彼女に心からの拍手を送る。

13yukiparty.jpg
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment